テルアビブ・オン・ファイア【映画】

TEL AVIV ON FIRE
2018年 ルクセンブルク/フランス/イスラエル/ベルギー
サメフ・ゾアビ(監督)
カイス・ナシェフ、ヤニブ・ビトン、マイサ・アブドゥ・エルハディ、ルブバ・アザバル、ナディム・サワラ、ユーセフ・スウェイロほか

何を隠そう、1964年の東京オリンピックを憶えている。
まだ4歳だったので、憶えているのは飛行機が煙で描いた空の五輪だけだが、高い建物が少なかったからか、わが家があった北区王子からもはっきり見ることができた。
NHKの大河ドラマ『いだてん』の最終回にも、この煙の五輪のくだりがあったが、『いだてん』は視聴率が過去最低だったんだとか。
かくいう私も最初のほうで挫折しそうになったが、あのちょっと独特な語り口に慣れるとクセになる何かがあって、だんたん楽しみになった。

連続ドラマは最初が肝心というが、いまにして思えばたしかにわかりづらかったかも、初回の『いだてん』……

さて、連続ドラマといえば表題の映画。

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エルサレムに暮らすアラブ系のサラーム(ナシェフ)は1967年の第三次中東戦争前夜を舞台にした女性に大人気のメロドラマ『テルアビブ・オン・ファイア』の撮影現場で雑用係として働いている。ある日、検問所でイスラエル軍の司令官アッシ(ビトン)に職業を問われたサラームは、『テルアビブ・オン・ファイア』の脚本家、と嘘をついてしまう。アッシはそのドラマの大ファンである妻に自慢しようと、サラームを脅してドラマの展開を聞き出すが、それじゃいかんと口出しをはじめ……

この作品、前の記事でさんざんケチをつけた『イエスタデイ』とちょっと似たところがある。
『イエスタテイ』のジャックはビートルズの曲を自分がつくったと偽ってチャンスをつかみ、本作のサラームはアッシが書いた脚本を自分が書いたと偽ってチャンスをつかむ。
幼馴染の女の子に恋をするが、なかなか相手にしてもらえないところも共通している。
でも、ジャックとちがってサラームは応援したくなった。
それに『イエスタディ』はさっぱり笑えなかったが、本作はおおいに笑えた。
もしかすると、ここまで観たなかで今年いちばん笑えた作品かもしれない。

基本的にはコメディだが、ストーリーの根底にはあのパレスチナ問題があり、サラームとアッシの関係性や劇中のドラマのストーリー展開に、アラブ人とユダヤ人の対立の根深さを垣間見ることになる。
ほんとうのところは当事者にしかわかりようがないのだろうが、ニュース解説とは違った切り口で伝わってくるものがあるのは確か。
誰もが納得できる昼メロの結末を模索する過程は完全に社会派ドラマだし、サラームが書いたドラマの最終話も、エミール・クストリッツァを思わせるなかなかの出来栄えだった。

謎だったのは、ことあるごとに登場して重要な役割を担うフムス。
アッシはこれが好物で、脚本のアイディアの見返りとして、躊躇なくフムスを要求する。

そもそもフムスとはなんなのか――というわけで、カルディで見つけたこれを試してみた。
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要はニンニクやクミンで味付けが施されたひよこ豆のペーストだが、「ユダヤ人はイスラエルでアラブ人から土地だけでなくフムスまで奪った」と憤る人もいるらしい。

当事者にしかわからない何かがあるんだろうね、きっと。

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