ボーダー 二つの世界【映画】

GRÄNS
2018年 スウェーデン/デンマーク
アリ・アッバシ(監督)
エヴァ・メランデル、エーロ・ミロノフ、ヨルゲン・トーション、アン・ペトレーン、ステーン・ユングレーン、ケル・ヴィルヘルムスン、ラーケル・ヴァルムレンデル、アンドレーアス・クンドレル、マッティ・ボーステッドほか

その昔、バックパックで3ヶ月ほどヨーロッパを旅したとき、列車で一緒になったアメリカ娘に、「リュック、ちっちゃいねえ」と驚かれたことがある。
確かに彼女のリュックは大きかった。
参考までに担がせてもらったところ、金塊か死体でもはいっているみたいに重くて、立ち上がるのがやっとという感じだった。

そうこうするうちに列車はスペインにはいり、入国審査官が乗り込んできた。
バルセロナ五輪が近かったせいか、審査はやたら厳しく、パスポートだけでなく持ち物も見せろと言われた。
衣類の風呂敷包み、ビーチサンダルのビニール袋、洗面ポーチ……すべて開けさせられ(片づけるのけっこう大変なんですけど、と)ため息が出た。
アメリカ娘のリュックからは、金塊でも死体でもなく開封ずみのジャムの瓶(それもコストコ的な大瓶)がふたつ出てきた。
そりゃ重いわけだと納得しつつ、ほかに何が出てくるか興味津々で見守っていたが、彼女の審査はそこで終了。

なんでやねんとひとりつぶやくポルトボーの午後であった。 

さて、入国審査といえば表題のスウェーデン映画。

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港の税関で働くティーナ(メランデル)は違法なものを持ち込もうとする人間を嗅ぎわける、類いまれな能力を持っている。ある日、ティーナはヴォーレ(ミロノフ)という男から何かを嗅ぎつけ、別室で確認するが、禁制品はどこからも出てこなかった。しかし、ヴォーレのことがどうにも気になるティーナは、彼の滞在先を突き止め会いにいく。すると……

原作者は『ぼくのエリ 200歳の少女』と同じヨン・アイヴィデ・リンドクヴィスト。
アッバシ監督とともに脚本も手掛けている。
本作も、エリ同様、独特の静けさと美しさにつつまれた北欧ホラーで、結末はおろか1分先の展開も読めないところや、北欧におけるトロールのなんたるかを言葉少なに教えてくれるところが、とてもすてきだった。

しかし、最大の魅力は、全編に漂う不穏な空気や、ヒロインが感じる不安や戸惑いに、普遍性が感じられることかも。
リンドクヴィストはスウェーデンのスティーヴン・キングと言われ、ホラー作家と位置づけられているようだが、エリや本作に感じる純文学っぽさは、いくら絞ってもキングからは出てこない気がする。

原作が収録された短編集もすでに邦訳が刊行されているし、ぜひ読んでみなくては。

とりあえず、キングじゃなくて、みかんを絞ってみた。
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日本のみかん、スウェーデンではSATSUMAと呼ばれ、大人気だそうです。

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