Balkan's Memorandum

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zoom RSS 凍氷 【本】

<<   作成日時 : 2016/06/19 18:56   >>

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Lucifer's Tears
ジェイムズ・トンプソン(高里ひろ 訳)
2014年2月25日刊 
集英社 ¥820(+税)

前回、「わけあってフィンランドの首都ヘルシンキを旅してきた」と思わせぶりなことを書いてみたが、友人に「どうせたいしたわけなんかないんでしょ?」とあっさり見破られてしまった。なんでわかったのかなあ。

というわけで、私がヘルシンキに行くことにした「たいしたことのないわけ」のひとつが表題の警察ミステリ。

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大手建設会社のロシア人社長の妻が愛人のアパートメントで惨殺され、ヘルシンキ警察のカリ・ヴァーラ警部はあらたにコンビを組むことになった生意気な若手巡査部長ミロと捜査に乗りだす。そんなある日、カリは国家警察長官のユリ・イヴァロに呼びだされて、第二次世界大戦時、フィンランドがナチスのユダヤ人虐殺に加担した事実にまつわる極秘調査を命じられる。告発された捕虜収容所はカリの祖父が看守をつとめていたところで、カリには“もみ消し”が求められていた。いっぽう、殺人事件の捜査についても、さっさと愛人を逮捕して終わりにしろと上層部から圧力がかけられ……

2013年に刊行された『極夜/カーモス』につづくカリ・ヴァーラ警部シリーズの第2作。カリの転勤にともない、舞台がキッティラからヘルシンキに移されている。

著者はフィンランド人女性と結婚してヘルシンキに住んでいるアメリカ人男性。フィンランドのあれこれの紹介が妙に詳しいという本シリーズの特徴は、カリのアメリカ人妻ケイト(臨月を迎えている)の弟妹を登場させることで、前作以上に鮮明に打ち出されている。

たとえば、カリがケイトの弟を町のサウナに連れていくシーンでは、フィンランド・サウナの解説に結構な紙幅が割かれている。ヘルシンキ滞在中、私も毎晩ホテルの地下のサウナに通ったが、残念ながら、そこは薪式ではなく電気式。次回はぜひ、カリが愛してやまない薪式公衆サウナに行かなくては。

ケイトの妊娠・出産に関しても情報満載。フィンランドではすべての妊婦に「アイティユスパッカウス」(マタニティボックス)が贈られるということも本書を読んではじめて知ったが、旅行中、「税金、高っ!」と感じるたびに、このアイティユスパッカウスの話を思いだした。ゆりかごから墓場までってそういうことか、と。

そして、ユダヤ人虐殺に関する調査のくだりでは、フィンランド近代史が手際よく、しかも興味深く語られている。いや、ほんと、それがいちばんの読みどころといっても過言ではない。

殺人事件の捜査とユダヤ人虐殺に関する調査は、ほぼ同時に、思いがけないかたちで幕が引かれる。解決というにはあまりにも強引な幕引きだが、実はその強引さが悪くない。いや、ぜひともヘルシンキに行ってみたくなったのだから悪いわけはないが、とにかく、前作よりカリがかっこよく感じられてそれが何よりだった。

シリーズはこのあと、第3作『白の迷路』、第4作『血の極点』(いずれも高里ひろ訳、集英社文庫)へとつづいていくが、著者のトンプソンは5作目『Helsinki Dead』の執筆中に不慮の事故で亡くなられたのだとか。享年50。これからってときに、ほんとうに残念なことです。

上の写真の本の横にある愛用のマグでムーミンが手にしているのは、もしかすると、
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このサウナヴァスタなのかも。さすがフィンランド、老若男女はもちろん、妖精もサウナなのである。

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カウッパトリから市営フェリーに乗って20分、問題の捕虜収容所があったとされる世界遺産スメオリンナ島へ行ってみた。この建物は島内にある戦争博物館。冬戦争(1939−1940)で使われた日本製の大砲が展示されていた。

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サウナのあとはもちろんビール。都合5種類のフィニッシュ・ビールを飲んだが、いちばん気にいったのは、その名もカルフ(熊)というこのラガー。

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